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股関節の外科

股関節

担当:大原英嗣 岡本純典 星山芳亮

股関節外科は大きく分けて以下の3つの手術を行っています。
1. インピンジメント障害(股関節唇損傷/関節軟骨障害)に対する手術
2. 寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)に対する手術
3. 人工股関節置換術・再置換術

1. インピンジメント障害
(股関節唇損傷・関節軟骨障害:femoroacetabular impingement : FAI)
に対する鏡視下手術

 FAIとは股関節屈曲時に股臼と大腿骨近位部の衝突によって生じる関節唇や関節軟骨の損傷が主な病態であり、近年話題になっています。臼の前方の骨性被覆が過剰な場合に生じるpincer type 、大腿骨の骨頭から頚部移行部前面で屈曲時のクリアランスが減少するcam type、その2つが合併したmixed ( combined ) typeの3つのtypeに分類されます(図1)。報告によりこの頻度には違いがありますが、それぞれが単独であることは少なくmixed typeが最も多いとされています。特にcam病変は、臼蓋の軟骨(荷重する部分の軟骨)が傷害されるので、変形性股関節症に繋がりやすいことがわかっています。この疾患概念が確立されたのは比較的新しく、これまで一次性の股関節症とされてきたものの一部にはこのような病態を基盤とした関節症が含まれている可能性があります。また、FAIで若年発症する患者にはアスリートやダンサーが多く、競技復帰のために手術を受ける方も多くおられます。若年者でも、痛みを我慢して競技を続けた結果、20歳代前半で既に変形性関節症の徴候が見られる場合もあります。
 症状は股関節痛がメインですが、深屈曲に内旋を加えて痛みが増悪したり、この肢位で轢音が生じるなどの所見があればさらに疑わしくなります(図2)。
画像診断は単純X線(図3)でわかるものもありますが、CT検査で初めてわかることがしばしばあります(図4)。また、股関節を放射状にスライスするMRA(股関節に造影剤を注入してMRIを撮像する)も有用で、3 Teslaの最新機器の画質ではかなり高精細画像(図5)が得られ、これらによりFAIの診断能力は飛躍的に向上しました。
 手術は股関節鏡を用いてインピンジメントの原因となる骨の切除と、損傷された関節唇の切除もしくは修復を行います。股関節唇は股関節の安定性と関節軟骨の保護の役目を担っていますが、ひとたび損傷されると機能不全となり、関節痛や関節炎の原因となりますので、可能な限り修復して温存するように務めています(図6)。また、難度の高い症例では、自作のソフトを利用して手術中に切除すべき骨病変の範囲と術後のimpingementの改善状況をシミュレーションすることに取り組んでいます(図4)。

関節図
図1    FAIの病態
多くはpincer病変、cam病変の合併したcombined typeである。

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図2.   Anterior impigement test

スクリーンショット 2015-04-21 10.47.48

図3 単純エックス線:pistol grip deformity(左図), crossover sign(右図)

関節図4
図4 CT検査と術前シミュレーションソフト
CT-MPR画像、CT-3D画像を元にCTシミュレーションで病変部の評価、手術準備を行う

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図5 MRA (MR Arthrography)正常股関節唇(左)、断裂(右)

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図6 股関節鏡視下手術
上段:関節唇付着部での断裂と縫合された関節唇
下段:cam病変部の骨切除前後

2. 寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)に対する手術: 
Rotational acetabular osteotomy ( RAO )

股関節痛の原因はほとんどの場合股関節唇損傷によるものと言われています。その原因は先に挙げたインピンジメント障害のほかに、骨盤の寛骨臼の骨頭に対する被覆が不足することで生じる不安定性があります。日本ではインピンジメント障害よりも頻度が高く、程度が高度な場合は変形性股関節症に進展することがわかっています。これを予防するために開発された手術が当院で行っている寛骨臼回転骨切り術です。この手術を早期に行えば、長期の関節温存が可能であると言われており、良好な長期成績も報告されています。 当科でも、10年以上にわたり本手術を行っており、良好な長期成績を上げています。   
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3. 人工股関節置換術

人工股関節置換術(THA)の手術進入法は大きく分けて2通りあります。後方法と前方法ですが、前者は手技が比較的簡単である一方、術後の脱臼が問題となります。当科では、平成13年から前外側進入法であるDall変法に変更しました。以後脱臼率は格段に改善し、初回THAにおいては最近の4年間では脱臼例はありません。また、人工物の固定方法はセメントを用いる方法と用いない方法がありますが、当科ではカップ、ステムともにセメント固定を行っております。20年で80%、25年で50%の生存率をしめし、他の方法よりも長期の優れた成績を実現しております。さらに、セメント固定法は将来インプラントの破損などで再置換術が必要になった場合、セメントがアクリル樹脂であることから骨組織の損傷は最小限で抜去出来ることも利点です。7